2018年 1月号
わかり合えないことからはじめる!
まわりの意見に同調してばかりだと「自分の意見を持ちなさい」と云われます。企業では異なる価値観をもった人に対しても、しっかり自分の主張を伝えることが求められます。
また逆に、自分が思ったことを明け透けに言いすぎると「まわりの空気を読みなさい、他人の意見を良く聞きなさい」と言われます。企業では「上司の意図を察して機敏に行動する」「会議の空気を読んで反対意見は言わない」「輪を乱さない」ことが良しとされます。
これらをダブルバインドといって、矛盾した二つの能力を同時に要求されることを指します。そんな世の中で生きてゆくんだから、「まじめな人ほど精神に異常をきたす」ともいわれます。
介護サービスの利用者からすると、一方で「残存能力を活かし、自立支援の為のサービスなんだから、出来ることは自分でやって下さい。」と言われ、出来るから自分でやってみようとすると「危ないから、勝手に自分ではしないで下さい。」と言われる事かもしれません。 そして、自分なりの都合を言うと、「また、わがまま言うて、だれも見てくれへんようになるよ…」
介護を受けながら暮らすというのも大変苦労のいるものです。けど、よく考えると介護を 受けるということでなくても、家庭や世間で他 人とかかわって生きるというのはそういった 矛盾したことの調整、すり合わせの連続かなという気もします。
「わかりあえないことから」という本があります。演出家の平田オリザさんの作品ですが、人と人は「分かり合えるはずだ」と思うからしんどくなるんですね。初めから「分かり合えるはずがない」から付き合いだすと、分からない人に伝えるにはどうすればよいかという努力をします。その努力が大切なんですよね。
二年前から手話を習い始めました。「手話なんかわからへん」といってしまえば、相手の話が伝わるわけないし、伝えることもできません。それは英語やハングルなどの外国語でも同じでしょうが、少しづつでもわかる努力を私はしてゆきたいと思います。