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2017年 8月号

忖度(そんたく)


 国会が終わって、安倍内閣は森友学園や加計学園の問題から逃げきりを図っていますが、いかが相成りますでしょうか。今回の騒動で、前川文部省事務次官の文書があったのかなかったのか、そして「忖度」という言葉がはやりました。「忖度」というのは、「他人の気持ちを推し量る」という意味ですから、漢字は難しいけど、意味は分かると思った人が多いのではないでしょうか。言い換えれば「空気を読む」といったところでしょうか。

 そもそも、コミュニケーションには2つの領域があるといいます。バーバル・コミュニケーション(言葉によるコミュニケーション)、とノンバーバル・コミュニケーション(非言語的コミュニケーション)です。ある実験では、人が他人から受け取る情報は、話す言葉の内容は7%、声の質(高低)、大きさ、テンポが38%、顔の表情 55%と言います。話の内容は7%で、残りの93%は、ノンバーバル・コミュニケーション。顔の表情や声の質だというのです。実際には身だしなみや仕草も大きく影響します。

 多民族国家であるアメリカでは、握手や抱擁などのノンバーバル・コミュニケーションが多く、研究も進んでいるといいます。日本のそれは一種独特で、能楽の世阿弥が一言で言い表しています。「秘すれば花」というのです。Aは本当の気持ちを言葉では語らない、Bは「Aが伝えたいであろ うことを察する」。その両者の気持ちが通じ合ったときに、「深く関われた」と満足するというのです。以心伝心などの言葉がもてはやされる所以ですね。

 日本人のコミュニケーションの特徴は、@語らぬ Aわからせぬ Bいたわる、察する Cひかえる D修めるEささやかな F流れる であるといわれます。(『日本人の表現心理』芳賀綏氏 中公叢書)詳細は省きますが、長い農耕生活と、外敵に責められにくいということからか、一人一人がコツコツ生きて、他者はその気持ちを汲み取ることが美しいと思う。諸行無常、時の流れには逆らえないという価値観を持ち続けたということです。

 事の良し悪しは別にして、担当者が「忖度」すること自体は受け入れられているのではないのでしょうか。

 そんなことを考えていると、人間には2種類いる?と思うようになりました。1つ目の種類は、職人や専門職など自分の思うことを大切にして生きる人生。もう一つは公務員など、生活や仕事のためには自分の意見や考えは押し殺す人生。考えたら、国や地方自治体でも選挙でトップは変わるけど、前と同じ官僚や一般職がそのまま職務を執行するのですね。私には公務員は無理かな…。

 


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