有限会社 ヒューマンリンク

 

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2015年 5月号

いけころしの説


 「急所だけ力を入れ、その外は気を抜いておく。茶碗なら先ず高台をしっかりと締めて、大きい高台であろうと小さい高台であろうとびりっともしない力を集めておく。扇でいえば要。次に腰を張らせて充分に力をもたせる。…それから力を軽く抜いて胴を無心で上げる。いよいよ飲み口まで来たら、キューツと一呼吸あるべきだ。」これは、陶芸で有名な川喜田半泥子(はんでいし)が残した「いけころしの説」の要約です。何か子育てや組織作りに通じるものを感じます。わかりやすくいえば、要(かなめ)に当たる部分、根っこに当たる所は丁寧に力をこめて作り上げ、後は軽く力を抜いて無心で仕上げ、最後は「よし」とばかりに一呼吸おく。力は抜くが、手放しではないというのも大切。そして、出来上がり、次の作品にかかるまでは一呼吸すらはばかれるということでしょうか。
 半泥子という変わった名前は、「半ば泥(なず)みて半ば泥(なず)まず」という意味で、禅宗の和尚の命名。名のとおり、一つのことに泥(なず)みきる人ではなく、陶芸家でありながら三重県会議員、(株)百五銀行頭取なども務めたそうです。生涯の人生哲学は「己を誉(ほ)むるものは悪魔と思うべし。我を誹(そし)るものは善知識を思うべし。只(ただ)何事も我を忘れたるが第一也」といいます。「心を空しゅうして事に当たるべし」ということでしょう。
 私もそうありたいと思います。中途半端で何事も泥(なず)みきらないところは同じですが、随分程度は違うようです。また、凡人なるがため、日々我がためにのみ迷うことも多く、困ったものです。
 あべのハルカス美術館にて展示会をしていると思います。少しでも文化に泥むことが出来ればと思う今日この頃です。

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