2013年 5月号
契約に必要な3条件
介護や福祉に向き・不向きというのがあるのでしょうか。私の経験では、特に無いように思うのですが、敢えて言えば「介護・福祉がしてみたい」「人の役に立ちたい」という気持ちがあれば、誰でもその人なりの役割は果たせると思います。というのも、介護・福祉というのは「広い意味」と「狭い意味」があって、家族介護やボランティアなどの広い意味ではやる気さえあれば「誰でも出来ること」でなければならないと思うからです。
しかし「狭い意味」、仕事としての介護職といった場合、介護福祉士やヘルパー等の資格のみならず、ある程度の適性はあるような気がします。一番向いていない様に思うのは、介護職になりたいというのではなく、人生経験が豊富で「人助け、介護の仕事は自分が一番向いている」という思い込みの強すぎる人です。介護の現場では、主人公は介護される側であり利用者です。豊富な人生経験を活かして利用者を「助けてあげよう」と意気込んでも、思い込んでいるのは介護者だけで利用者は「しかたがなく手伝ってもらっているだけ…」という場合が良くあります。大切なのは相手(利用者)の人生を受け止め、個性を尊重して、その人なりの人生をお手伝いをすることです。
色んな人の人生(それも病や障害で傷ついた人生)をまともに受け止めるというのは大変なことです。ですから、この仕事を真面目にすればするほど「自分は向いていないのではないか?」と悩み続けることになると思います。「向いていないかもしれないけど、仕事としてしたい…」「関わりたい…」、そこに人が成長する鍵があるのでしょう。「自分はこれでいい…」と思ったら成長は止まってしまいます。
とは言っても人の能力には限界があります。出来うる能力を発揮する為に、私たちは仕事に条件をつけます。それを利用者との間で契約という形で約束をします。そのポイントは3つ。サービスの時間、場所、料金を確定することです。これは契約をする時に絶対必要な条件ですので覚えておいてください。
福祉や介護を人助けと考えた場合「そんな条件付けはおかしい」という人も居ます。現に私自身この仕事に関わりだした当初、「相手は困っているのだから一切の条件付けはいらない…」といった関わり方をしたことがあります。女房や子供も巻き込んで、就業時間中はおろか、家で飯は食わすわ風呂には入れるわ、挙句の果てに風俗にまで連れて行ったこともあります。今になって思うと「ずいぶん無茶をしたな…」と思います。その結果は相手に感謝されるどころか、「俺のおかげで稼いでいるんやろ…」なんて陰口も利かれました。それでも仕事自身には誇りも持っているので今も続けていますが、先の条件付けは絶対必要ということを確信しています。