有限会社 ヒューマンリンク

 

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2013年 3月号

圧倒的絶望の先の明るさを求めて


 「ライフ オブ パイ」という映画を観ました。インドで動物園を運営していた一家が、経営難のため土地を売って、動物を引き連れてカナダに移住する事が決まる。動物を積んで太平洋を航海中事故によって船は沈没、パイという青年がただ一人小舟で助かる。小舟にはオランウータンとシマウマも居るのだが、テントの奥(このテントの中は最後までよく見えない。まるで人の深層心理をあらわしているよう。)から、ハイエナと最後にトラが登場する。パイはイカダを組んで、トラからの距離を置くようになるが、その他の動物はトラの餌となる。パイは、自分が餌にならない為に何とか食料を確保して生き延びる…。
最後は何処かの浜に辿り着くのだが、振り向きもせず去ってゆくトラと別れるのに何故かしら泣き叫ぶパイ…。3Dですばらしい映像と話の深さに感動しました。  私達の生活の中にも、ある日突然「トラ」が暴れだす事があるかもしれません。飼いならす事は出来ず、自分が食べられてしまわない為には餌を与え続けなければならない恐ろしい存在。そばに居ても精神をすり減らすだけで何の意味もないと思えるような相手。しかし、その相手が居たからこそ生きる意味を感じ、緊張ある生活を送れたとパイは最後に思ったのでしょうか。

 生きている事すらつらくなるような体験をした人に出会ったとき、私はとっさには言葉も出ません。死ぬなとも言えないかも知れません。しかし、この映画を観て、そのつらい事を体験し、トラとの距離を測りながら、心通わす無駄な努力を重ねながら「ひょっとしたらこれが自分の生きる意味なのかも知れない。」と思えるときが来るかもしれないと話せる気がしています。
 「ひょっこりひょうたん島の登場人物は全て死んだ人たちで、制作の狙いは「圧倒的絶望の先の明るさ」を描きたかった…。」という井上ひさしさんの言葉を思い出しました。

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